生前整理とは?進め方は?やるべきこと・やり方をわかりやすく解説
「終活」の一つとして、生前整理をする人が増えています。生前整理をすることですっきりとしてその後の人生に対して前向きな気分となりやすいほか、家族の負担を軽減することが可能となります。
では、生前整理では、具体的に何をすればよいのでしょうか?また、生前整理を進める際はどのような点に注意する必要があるのでしょうか?
今回は、生前整理の概要ややるべきこと、注意点などをまとめて解説します。
生前整理とは
生前整理とは、自身の人生の終焉に備えて身の回りの物品や財産を整理したり、自身の葬儀などについて検討したりしておくことです。単に物を捨てるだけではなく、自身の今後の人生に必要なものと不要なものとを見極めることに重点が置かれます。
生前整理をすることで、今後の人生をより充実したものとすることにつながるでしょう。
生前整理を始める時期に、特に決まりはありません。定年退職をしたタイミングや70歳の誕生日を迎えたタイミングなどを自身で定めて行う場合もあれば、伴侶を亡くしたタイミングで行うことや、何らかのきっかけで思い立った時点から始めることもあります。
遺品整理との違い
生前整理と似たことばに、「遺品整理」があります。遺品整理とは、家族が亡くなった後に、遺族が家族の残したもの(=「遺品」)の片づけをすることです。
生前整理がされないまま家族が亡くなると、残された品の価値がわからず家族が捨てるかどうかの判断に迷ったり、大切なものの価値が分からず捨ててしまったりするおそれが生じます。
生前整理は、お元気なうちに「自分で」身の回りの整理をすることに対し、遺品整理は本人が亡くなってから「家族が」身の回りの品を整理する点で異なります。
老前整理との違い
「老前整理」という言葉も存在します。老前整理とは、自身が老いる前に、身の回りの品や人間関係などを整理することを指します。
「老前」とはいっても、「老」いるのが何歳であるのかは人によって異なり、定義も明確ではありません。しかし、一般的に、老化が進行すると身体の自由が効きづらくなったり、判断力が低下したりします。
そこで、まださほど老いを感じていないうちに、老後を楽しくかつ不便を少なく過ごすための対策として行うのが、老前整理です。
生前整理と老前整理は、自身で身の回りを整理する点で共通しています。一方、生前整理がいずれ亡くなることへの備えであるのに対し、老前整理は老いへの備えである点で異なります。
生前整理で主にやるべきこと
生前整理で行うべきことについて、明確に決まっているわけではありません。自身の状況に合わせ、自身が必要であると感じる対策を行えばよいでしょう。
とはいえ、何をどのように進めればよいかわからない人も少なくないことでしょう。ここでは、生前整理として行われることが多い事項について解説します。
- 必要なものと不要なものを分ける
- 財産のリストを作る
- サブスク契約を見直す
- 不要な預金口座などを解約する
- 必要に応じて遺言書を作る
- お墓について検討する
- 葬儀について検討する
- エンディングノートを書く
必要なものと不要なものを分ける
1つ目は、必要なものと不要なものとを分けることです。
長年その家で暮らしている場合、どうしても物が増えてしまいがちです。特に必要性を感じないものの、「とりあえず取っておこう」と保管したまま忘れている物もあるでしょう。
しかし、物が多いと急に入院したり亡くなったりした際に、家族が必要なものを探すのに苦労するうえ、遺品整理にも手間やコストがかかりやすくなります。また、目下の生活を考えても、いったん区切りとして物を減らして必要なものだけを残すことで、すっきりとした気持ちでこれからの人生を送りやすくなるでしょう。
そこで、生前整理では必要なものと不要なものを分け、不要と判断したものは捨てたり、人にあげたり、売却したりします。
財産のリストを作る
2つ目は、財産のリストを作成することです。
自身の財産を正確に把握できていないケースは、実は少なくありません。そこで、生前整理では一度自身の財産を洗い出し、一覧表にまとめておくことをおすすめします。
どこにどのような財産があるのかわからなければ、相続が起きてから家族が財産を把握することに苦労して相続手続きが遅れたり、財産を見つけられず手続きが漏れてしまったりするかもしれません。
一覧表にまとめておくことで、万が一の際に家族が財産を把握でき、解約や名義変更などの手続きがスムーズとなります。また、財産の一覧表は、他の生前整理や相続対策などの土台ともなります。
たとえば、一覧表を見て最近使っていない預金口座の存在に気付けば、生前整理として解約しておくことが検討できます。また、財産が多ければ税理士に相談して相続税の試算をしてもらったり、節税対策を検討したりできるでしょう。その他にも、遺言書を作成するにあたって、「誰にどの財産を遺そうか」と検討する資料にもなります。
サブスク契約を見直す
3つ目は、サブスク契約(継続課金サービス)を見直すことです。
サブスクには非常に便利や有益なサービスも多く、契約している方も多いことでしょう。しかし、ほとんど使わなくなったにもかかわらず解約を失念し、毎月対価だけが引き落とされているケースは少なくありません。
そのため、生前整理では自身が契約しているサブスク契約を洗い出し、不要なものは解約することをおすすめします。
不要な預金口座などを解約する
4つ目は、不要な預金口座や証券口座などを解約することです。
たとえ残金が少額であっても、亡くなってから口座を解約しようとすればさまざまな書類が必要となり、家族の負担が大きくなります。「少ししかお金が入っていないのだから、そのままにすればよい」と思っても、故人名義の口座がそのまま残っていることを気にする人もいるうえ、犯罪に悪用されたり口座管理料が引かれていったりするリスクもあります。
そのため、今後もほとんど使用する予定のない口座は、生前整理で解約しておくことをおすすめします。
必要に応じて遺言書を作る
5つ目は、必要に応じて遺言書を作成することです。
遺言書とは、自身が亡くなったあとの財産の分け方を生前に決めておく法的書類です。遺言書を作成しておくことで相続トラブルの抑止につながるほか、相続手続きがスムーズとなる効果も期待できます。
そのため、遺産分けで争いが生じるおそれがある場合や自身の希望どおりに遺産を分けてほしい場合などには、生前整理の一環として遺言書の作成も検討するとよいでしょう。
ただし、有効な遺言書を作成するには法的な要件を満たす必要があるほか、内容によってはむしろトラブルの原因となるおそれもあります。そのため、遺言書の作成は、専門家に相談しながら行うことをおすすめします。
お墓について検討する
6つ目は、お墓について検討することです。
生前整理では、代々のお墓に入るのか、夫婦で新たにお墓を建立するのか、永代供養や散骨を希望するのかなどを検討します。入るお墓が決まっていない場合には、元気なうちに墓地や霊園を訪れるなどして希望する墓地や霊園などを決めておくとよいでしょう。
また、自身の希望がある場合や生前に契約までを済ませた場合には、家族にその希望を伝えておいてください。
葬儀について検討する
7つ目は、葬儀について検討することです。
近年では葬儀の形も多様化しており、従来のように一般の参列者を招いて通夜や告別式を行う形態のほか、家族など近しい者だけで執り行う「家族葬」、通夜や葬儀を行わず火葬のみを行う「直葬」などさまざまな選択肢があります。
亡くなってから葬儀までは時間的な余裕がないうえ、ご家族の悲しみに暮れていることでしょう。そのような中、喪主となる者が葬儀社を選定したり、葬儀の形態やプランを決めたりしなければなりません。
また、依頼先の葬儀社を誤ると、当初の金額に必要な物品やサービスが含まれておらず追加料金がかかるなどして、結果的に高額な費用がかかるリスクも生じます。
生前整理の一環として葬儀の形態やプラン、依頼する葬儀社などを決めておくと、信頼できる葬儀社をじっくりと見極められるほか、ご家族の負担を大きく軽減することが可能となります。
家族葬のアイリスでは葬儀に必要な物品やサービスを全て含むプランをあらかじめ提示するため、大切なお別れの場面でご家族が余計な追加料金を心配する必要がありません。生前整理として葬儀社を検討している際は、家族葬のアイリスまでお気軽にご相談ください。
エンディングノートを書く
8つ目は、エンディングノートを書いておくことです。
エンディングノートとは、生前整理や終活に必要な事項を記載できるよう、さまざまな記載欄が設けられているノートです。記載する内容はエンディングノートごとに異なるものの、「財産の一覧」や「葬儀のこと」「家族へのメッセージ」などの項目は、ほとんどのノートで設けられています。
エンディングノートを書くことで、家族への必要事項の「申し送り」になるほか、家族へのメッセージを残すことも可能となります。また、エンディングノートを書いていく中で自身のこれまでの人生の棚卸ができ、これからの人生をより前向きに過ごすきっかけとなるでしょう。
生前整理の主なメリット
生前整理には、さまざまなメリットがあります。ここでは、生前整理の主なメリットを5つ解説します。
- すっきりとした気持ちになる
- 家族の負担を軽減できる
- 相続トラブルを防止しやすくなる
- 相続税を抑えられる可能性がある
- 自身の望む葬儀や供養の形を実現しやすくなる
すっきりとした気持ちになる
生前整理では、不要なものを整理したり、自身の想いと向き合ったりします。自身のそれまでの生涯を棚卸して整理することで、すっきりとした気持ちになりやすいといえます。
家族の負担を軽減できる
生前整理は、家族の負担軽減につながります。なぜなら、生前整理によって物が減ったり整理整頓されたりすることで、遺品整理がしやすくなるためです。
また、財産などが一覧表にまとまっていることで、財産を調べる労力も大きく軽減できるでしょう。
相続トラブルを防止しやすくなる
生前整理は、相続トラブルを防ぐことにもつながります。なぜなら、適切な遺言書を作成しておけば、亡くなった後で家族が遺産分けについて話し合う必要がなくなるためです。
また、エンディングノートなどで家族への感謝を記載することで家族の想いがほぐれ、相続争いの防止につながる場合もあるでしょう。
相続税を抑えられる可能性がある
生前整理をすることで、相続税を抑えられる可能性があります。なぜなら、生前整理をすることで自身の財産の全容が把握でき、財産が多いことが分かれば、税理士などへ相談したうえで節税策を講じるきっかけとなるためです。
生前整理をきっかけとして早期から節税対策を行うことで、相続税を抑えられる可能性が高くなるでしょう。
自身の望む葬儀や供養の形を実現しやすくなる
生前整理をすることで、自身の望む葬儀や供養の形を実現しやすくなります。生前整理の一環で自身が望む葬儀や供養の形を具体化して、これをあらかじめ家族に伝えておくことで、家族が想いを実現してくれる可能性が高くなるためです。
生前整理の注意点
生前整理では、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?ここでは、主な注意点を2つ解説します。
- 時間と労力がかかる
- 必要なものまで捨て過ぎない
時間と労力がかかる
生前整理を行うには、時間や労力がかかります。そのため、「いつかやろう」と考えるのではなく、体力のある元気なうちから取り掛かることをおすすめします。
必要なものまで捨て過ぎない
生前整理では、必要なものまで整理してしまわないよう注意が必要です。
生前整理では「不要なもの」は捨てたり贈与したりすればよい一方で、今後も使うものまでを無理に手放す必要はありません。必要なものまで手放してしまい、その後買い直すこととなれば、本末転倒です。また、いったん贈与したものを返してもらうことは、難しいでしょう。
そのため、その場の勢いで極端に物を捨てたりあげたりしてしまうのではなく、今後の生活をよく検討したうえで、必要なものは残すようにしてください。
生前整理を成功させるポイント
生前整理をしようにもなかなか腰が上がらなかったり、途中で頓挫してしまったりすることも多いようです。最後に、生前整理を成功させるポイントを3つ解説します。
- 一度にすべてをやろうとしない
- 家族と一緒に進める
- 前向きな気持ちで取り組む
一度にすべてをやろうとしない
1つ目は、一度にすべてをやろうとしないことです。
生前整理はやるべきことのボリュームが大きく、一度にすべてを行うことは困難です。無理に一度に済まそうとすれば億劫となり、先延ばしにしてしまいやすくなるでしょう。
生前整理を成功させるにはまとめて行おうとするのではなく、「まずはこの部屋だけを整理しよう」、「まずは葬儀についてだけ決めよう」など、1つずつ小分けにして行うのがポイントです。
家族と一緒に進める
2つ目は、家族と一緒に進めることです。
家族に協力してもらうことで自身への適度なプレッシャーとなり、途中頓挫しにくくなるでしょう。また、葬儀やお墓の選定など、家族に相談しながら進めるべき生前整理も存在します。家族とともに生前整理を行うことは、家族への情報共有となることもメリットです。
前向きな気持ちで取り組む
3つ目は、前向きな気持ちで取り組むことです。
生前整理を「亡くなる準備」と捉えてしまうと、何となく悲しい気持ちになり、進めることが億劫になります。しかし、生前整理は身辺をいったん整理し不安を減らし、その後も充実した人生を送っていくための準備であり、決して悲しいものではありません。
前向きな気持ちで取り組むことで、生前整理を完遂しやすくなるでしょう。
まとめ
生前整理の概要や生前整理としてやるべきこと、生前整理のメリットや注意点などを解説しました。
生前整理とは、自身の人生の終焉に向けて身の回りの整理などを行うことです。具体的には、不要なものを手放すことや財産リストの作成、葬儀の検討などを行うことが多いでしょう。
生前整理には、すっきりとした気持ちでその後の人生を送りやすくなることや家族の負担を軽減しやすくなること、自身の望む葬儀・供養の形を実現しやすくなることなど多くのメリットがあります。
生前整理を始める時期に特に決まりはないものの、生前整理には相当の労力や時間を要するため、お元気なうちから取り掛かることをおすすめします。
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