わが国では現在夫婦別姓についての議論が行われていますが、現状では法律上夫婦別姓はまだ認められておらず、夫婦のどちらかの姓に改姓しなければなりません。
職場などでは独自の運用で旧姓を使用できるように配慮されている会社もありますが、婚姻制度上はまだ法整備はされていません。
妻が夫の姓に変えることも、その逆もできますが、多くは妻が夫の姓に変えるのが一般的ですから、妻が夫の姓に変えて婚姻した後、夫が死亡してしまったらどうなるのでしょうか。
■そのままでは夫姓のまま
夫婦が生存しながら離婚した場合には妻は当然に旧姓に復しますが、死亡によって離別した場合は何も手続きをしなければ妻はそのまま夫の姓のままです。
旧姓に戻したい場合は「復氏届」という手続きが必要です。
住所地の市区町村役場か本籍地の役場で手続きが可能です。
復氏届をすると、亡くなった配偶者の戸籍から抜けることになるので結婚前の戸籍に逆戻りします。
旧戸籍が両親の戸籍であった場合はその戸籍に戻ることになります。
もし両親の戸籍でなく自分独自の戸籍にしたい場合は「分籍届」を行って自分の戸籍を作ることもできます。
■子どもがいる場合はちょっと厄介
子どもがいる場合は、妻が復氏届や分籍届を行っても子供も自動的に妻の戸籍に入るわけではありません。
子どもの戸籍はなおそのままで、姓も夫の姓になります。
子どもの姓を妻の旧姓に変えて戸籍も移す場合には家庭裁判所での手続きが必要になります。
まず家庭裁判所で「子の氏の変更許可申請」を行って、その許可をもらわなければなりません。
この許可を取った後で、役所で入籍届を行えば無事に子供を自分の籍に入れることができます。
■夫の親族との関係はなお続く
復氏届や分籍届、子供の入籍届を行っても、夫の親族との関係はなお続きます。
従って民法上の扶養義務などは存続するので関係性を絶つことはできていません。
中には配偶者の死亡後も引き続き家族として情を通わせて生活する人もいます。
しかしそうした事情が無い場合には法律上縁を切ってしまいたい人が多いでしょう。
その場合は別途「姻族関係終了届」という手続きが必要です。
姻族関係を終了させるかどうかは配偶者の一存ですので、夫の親族の同意などは不要です。
また相続権などにも影響はないので、相続した遺産はそのまま保持することができます。
配偶者は必ず相続人になるので放棄しない限り何らかの遺産を承継していることでしょう。
例え夫の親族から返還を求められても応じる必要はありません。