1.相続手続きの流れ
不動産を相続した時には所定の手続きを行わなければいけません。相続時には調査が必要だったり、協議が必要だったりしますので、事前にしっかり確認しておきましょう。
■不動産を相続した時の全体の流れ
不動産を相続した時の流れは以下の通りです。
遺言書があるかを確かめる
- 相続人の調査を行う
- 相続財産の調査を行う
- 遺産分割協議を行う
- 遺産分割協議書を作成する
- 相続登記、名義変更を行う
大きく分けると上記の6段階になります。例えば、④の遺産分割協議を行った後に①の遺言書の存在が発覚した時には、協議内容全てを見直す必要があります。そのため、①~⑥までは順を追って正確に行いましょう。
■相続登記とは?
不動産を相続した時には、最終的に上記⑥にある通り「相続」登記をする必要があります。相続登記とは、簡単に言うと「亡くなった不動産の所有者から、相続された人の名義に変更すること」になります。良く誤解されやすい点としては、相続登記は「〇〇までに行いなさい」と期限が決まっているワケではない点です。
つまり、相続した不動産の名義を亡くなった方の名義のままにしていても、何か指摘を受けるワケではないのです。但し、名義を書き換えないと売却手続きも出来ませんし、そもそも公的に「自分の所有である」という主張ができません。そのため、不動産を相続した時は迅速に相続登記を完了させましょう。
■相続登記の具体的な流れ
相続登記は名義変更になるので、被相続人(亡くなった人)と相続人(相続を受ける人)の以下の書類を取得しなければいけません。
<被相続人に関する書類>
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
<相続人全員に関する書類>
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の住民票
<相続人全員に関する書類>
- 不産産の固定資産評価証明書
- 不動産の全部事項証明書
- 相続登記申請書
- 遺産分割協議書
上記①~④に関しては、市役所や区役所などの行政役場で取得できます。上記⑤の評価証明書は年に一度税務署から郵送されます。⑥の全部事項証明書と⑦の相続登記申請書は法務局で取得できます。⑧遺産分割協議書は、相続人全員で協議した後に作成する書類です。
■気をつけること
相続する時の財産は預金や株や債券、そして不動産など様々な種類があります。その中でも不動産は「名義」があるため、手続きが他の財産に比べて煩雑になります。そのため、不動産の相続を受ける時には前もって何をしなければいけないか確認しておきましょう。それが、不動産相続を遅滞なく完了させる事に繋がります。
2.遺言書があるときの手続き
相続をした時には、まず被相続人(亡くなった方)の遺言書の有無を確認します。それは、相続財産が「不動産」である時にも同様です。遺言書があった時の手続きは、遺言書がない時の手続きとはやり方が異なるので注意しましょう。
遺言書には3通りのものがあります。
・自筆証書遺言・・・自分で作れる分トラブルも多い
・秘密証書遺言・・・ほとんど使われることはありません
・公正証書遺言・・・公証役場で作る遺言で、一番多い形態です。トラブルも少ないです
■遺言書がある時
遺言書がない時には、法律で決まっている通りに財産を分割するか、相続人同士で協議をして財産を分割します。一方、遺言書がある時は、原則遺言書に書かれている内容通りに相続を行います。ただし、遺言書の種類が「自筆証書遺言」か「秘密証書遺言」の時には、家庭裁判所の検認が必要になります。
自筆証書遺言とは、民法で定められた通りに作成する一般的に広く利用されている遺言書です。一方、秘密証書遺言とは、遺言書の内容を秘密にしたまま公証人に「存在」を証明してもらう遺言書です。
家庭裁判所の検認とは、相続人に対して遺言の「存在」と「内容」を知らせ、遺言書の「形状」「加筆・所筆の状態」「日付・署名」などを確認する事です。この確認作業を経ないと遺言書が偽造・変造されていない事を証明できないのです。
■手続きについて
遺言書があるかないかで異なる事の一つとして、単独で登記できるか共同でしか登記できないかと言う点があります。
遺言書がある場合の相続登記は、遺言の内容が相続人に対しての相続分の指定(通常の相続)か、遺贈(相続人以外への相続)の場合で手続き方法が異なります。通常の相続の場合は単独で相続登記が可能になりますが、遺贈の場合には、受贈者(遺贈により財産を受け取る相続人)と法定相続人との共同申請になります。
■遺言書がある時の必要書類
遺言がある場合の必要書類は以下の通りです。
①死亡時の被相続人の戸籍謄本
②被相続人の住民票の除票
③新たに名義人になる者の住民票
④遺言書(自筆証書及び秘密証書遺言については検認済みのもの)
⑤相続を受ける相続人の戸籍謄本
⑥不動産の権利書
⑦相続人全員の印鑑証明書
⑧相続人全員の戸籍謄本
上記①~④までが、いずれの場合も共通で必要な書類になります。遺言による相続分の指定(相続人への相続)がある場合には上記⑤が必要です。また、遺贈の場合は上記⑥~⑧が必要になります。
■気をつけること
不動産の相続で更に遺言書がある場合には、単独で登記ができるか共同で登記をしなければいけないかの違いがあります。この点が一番煩わしい所です。この判断は一般人がするの難しいので、司法書士や法務局などの専門家に依頼すると良いでしょう。
3.相続人の確認
相続が発生した時には、相続人の確認は必ず行わなければいけません。この調査は非常に手間がかかる作業なので早めに行いましょう。
■相続人調査の必要性
被相続人(亡くなった方)の相続人は誰なのかは、身内であれば分かりきっている感じもします。しかし、相続の時は身内の中で家族関係が分かりきっていても、他者に分かるように証明する必要があります。その相続人の調査方法が「戸籍の確認」になります。
そのため、財産の確認のために銀行や法務局、財産の種類によっては証券会社や運輸局などへ、戸籍を提出する必要があるのです。戸籍を集め、相続人調査をする必要があるのは、財産の種類が不動産であっても同様です。
■戸籍を集めなければいけない範囲について
相続人の家族構成によって、戸籍を集めなければいけない範囲は変わってきます。具体的には以下の通りです。
<全ての方に共通する戸籍>
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・相続人全員の現在戸籍謄本
当然ながら被相続人と相続人に戸籍謄本は必須書類になります。
また、被相続人に子供がいる(または「いた」)場合と、子供が居ない場合で収集するべき戸籍の範囲は、以下のように異なります。
<子供がいる(または「いた」)場合>
・被相続人より先(または同時)に死亡した子については、出生から死亡までの連続した戸籍
・子供が健在の場合には上述した通り、相続人の現在謄本
<子供がいない場合>
〇被相続人の父母または祖父母のいずれかが健在の場合
・既に死亡した父母または祖父母の死亡記載の戸籍謄本
〇故人の父母または祖父母全員が被相続人より先に亡くなっている場合
・被相続人の父母双方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・被相続人より先(同時含む)に死亡した兄弟姉妹についての出生から死亡までの連続した戸籍謄本
※当然、兄弟・姉妹が健在の場合は「相続人になる」ので、上述のように兄弟・姉妹の現在戸籍謄本は必要
上記のように、被相続人の家族状態によって集める戸籍が異なる点が煩わしいです。また、現在戸籍謄本の取得(本籍地の市区町村役場で取得)はそれほど手間ではありませんが、出生から死亡までの連続した戸籍は集めるのが大変です。
■出生から死亡までの連続した戸籍の集め方
出生から死亡までの連続した戸籍を集める時には、死亡した時の戸籍から始まり、出生までを遡るという方法が一番楽です。具体的には以下のような流れになります。
①死亡した時の戸籍謄本を取得
②①の戸籍から「1つ前の本籍地」を確認
③②で見つけた本籍地の市区町村役場で戸籍謄本を取得
この②③を繰り返します。
■気をつけること
相続人調査は、人によっては非常に大変な作業になります。スムーズに役場で取得できれば良いですが、人によっては、手書きの戸籍謄本(かなり昔の人は特に)である場合があります。その場合は文字が判別しにくいので、本籍地を追えない可能性もあります。自力での調査が難しそうであれば、司法書士などの専門家に相談する事をお勧めします。
4.相続財産の確認
相続が発生したら、被相続人(亡くなった方)が持っていた財産を調査する必要があります。いくら夫婦とは言え、財産を全て把握しているワケではない事もあるので、相続財産の確認は必ず行わなければいけません。
■はじめにするべきこと
財産の種類は、預金や株・債券などから、自動車や骨董品、貴金属など非常に幅広いです。その中でも不動産という財産は、不動産の中でも色々な種類に分かれます。具体的には以下の通りです。
・マンション
・一戸建て(建物)
・土地
・借地権
・借家権
・農地
・倉庫
・雑種地
・森林
このように様々な種類の不動産があるため、身内だからと言って所有不動産を全て把握していると思ってはいけません。実は全く利用していなかった農地があったり、固定資産税も微々たる額なので気づかなかった田舎の土地だったりと、認識していない不動産財産がある事も少なくありません。
■不動産の調査方法相続財産に不動産(土地や建物)がないか調査する方法
〇不動産はどこにあるか
まずは不動産の所在地を調べます。対象の不動産が被相続人所有のモノであるかを確かめるためには、登記(所有権を証明する)をしている「法務局」と、固定資産税を管理する「市区町村役場」で確認します。
〇調査する項目
まずは被相続人が所有しているはずの以下の書類を探しましょう。
・登記済権利書(もしくは登記識別情報)
・固定資産税の課税通知書(明細書や納付書)
この2つのどちらか(特に登記済権利書)は家に保管しているはずなので、大抵の場合は上記2つの書類で所有不動産は判断できます。
そして、役所で以下の書類を取得します。
・資産明細,課税台帳の写し(呼称は多数あり。「資産税課」のような呼称の課で対応してくれます)
・固定資産評価証明書
最後に法務局で登記について調査しましょう。法務局で取得する書類は「登記簿謄本(登記事項証明書)」です。なぜ法務局が最後かと言うと、登記簿謄本は物件の「地番(住居表示でない住所)」が分からないと取得できないからです。その地番は、上述したの書類であれば記載されているので、法務居でスムーズに必要書類を取得できるのです。
登記簿謄本を発行すれば、不動産財産の全ての所有権が被相続人である事は証明できますので、所有財産(不動産)の確認は完了となります。
法務局で取得する登記簿謄本は、法務局のハンコが押してある正式な書類です。ただ、その前に、本当に被相続人の名義であるかを確かめたい人は登記情報提供サービスでネット上から閲覧することは可能です。
■気をつけること
このように相続財産を調べる時に、不動産が財産の場合は手間がかかる事が多いです。まずは、家の中で保管している権利書を探しましょう。権利書は昔金庫に入れている人もいるくらい、貴重なモノではあるので、どこかに保管している可能性が高いです。
どうしても財産を調査し切れなかったり、数が多すぎて手続きが煩雑になったりした時には、無理をせずに司法書士などの専門家の力を借りましょう。
5.相続の承認と放棄
相続が発生した場合には、必ずしも財産を全て相続するワケではありません。場合によっては相続放棄をする事も可能なのです。そのため、相続をする時には、そもそもどのような相続方法があるかを認識しておきましょう。
■相続は選択できる
冒頭で言ったように相続が発生すると、必ずしも財産を相続するワケではありません。相続人に債務(借金)などがあれば、相続をするとその債務も引き継いでしまうので、以下の3つの方法を選択する事ができます。
①単純承認
②相続放棄
③限定承認
簡単に言うと、上記①の単純承認は民法、もしくは相続人同士の協議に従い相続財産を全て相続する事です。また、②相続放棄は、その名の通り相続財産を一切相続せずに相続する権利を放棄する事です。最後の、③限定承認については後述します。
■承認・放棄の期間
相続財産を、上述した①~③のように相続するか否かを決める期間は、自分のために相続開始があった事を知ってから3か月以内です。この期間内に相続を承認するか否かを決めなければいけません。
「自分のために相続開始があった事を知った時」とは、被相続人が亡くなって自分が相続人になった事を知った瞬間です。複数人の相続者がいる場合には、相続発生を知るタイミングは各々違うので、「自分が相続人である事を知った時」になっているのです。
■相続放棄
相続放棄は全ての相続財産を放棄する事です。相続放棄をするためには、上述した期間内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。この期間を過ぎてしまうと単純承認したものと見なされるので注意が必要です。
相続放棄は、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理した時から効力が発生します。当然ですが、例えば親(被相続人)の財産を放棄した場合には、自分の子供(被相続人の孫)にも財産を受け継がせる事は出来ません。
■限定承認
プラスとなる財産よりも借金などのマイナスの財産が多い場合には相続放棄をすれば良いです。ただ、どちらが多いか分からないという場合もあります。このような場合には、相続したマイナスの財産を、相続したプラスの財産から返済する事ができます。
仮に、プラスの財産では返済しきれずに借金などが残ってしまった場合には、残った借金を負う事はありません。一方、精算して余剰財産があれば相続人は、その余剰財産を相続する事が出来ます。これが「限定承認」です。
限定承認も相続放棄と同様、上述した期間内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。尚、相続人が複数いる場合には相続人全員の同意がなければ限定承認の申し立ては出来ません。
■気をつけること
このように、財産を相続するか否かは自分で決める事ができます。この判断をするには、そもそも財産の種類を調べ、財産の額を調べる必要があります。思わぬ債務(借金)などが発生しても、焦らずに相続放棄や限定承認も視野に入れて相続を行いましょう。
不動産の所有者を調べる際には、名寄帳を市町村役場で取得すると良いでしょう。
権利書や登記識別情報を有していなくても名寄帳を取り寄せれば被相続人の所有不動産を調べることが可能です。
名寄帳(なよせちょう)とは、ある人物が持っている不動産の一覧表の一覧表のことです。
一筆一棟ごとの「固定資産課税台帳」を所有者ごとにまとめたものです。
6.遺産分割協議の仕方
相続が発生し、相続人が複数いる場合には財産をどう分割するかを決めなければいけません。遺言書があれば遺言書に従う事が多いですが、遺産分割協議を行い相続人全員が同意すれば、遺言書に従わなくても構いません。特に、分割方法が複数ある「不動産」を相続する時に遺産分割協議を行う場合には、キチンと全員が納得する協議を行いましょう。
■遺産分割講義とは
遺産分割協議は、遺言書がない時や遺言者があっても相続分の指定のみをしている場合、もしくは遺言書から漏れている財産があった場合に行う相続人同士の協議のことです。相続人同士で協議をして、遺産の分割を決めるのです。
遺産分割協議は相続人全員の合意によって成立します。一度遺産分割協議が成立すれば、無効や取り消しの特別な理由がない限りは、原則やり直しはできません。
冒頭でも言いましたが、相続人全員の合意があれば、必ずしも遺言や法律に従う必要はないです。極端な話、相続人が複数いる場合で一人が相続財産を一切受け取らないという選択をすることも可能です。
■特殊な遺産分割協議
〇分割協議がまとまらない
相続人同士で分割協議がまとまらない時、もしくは協議が出来ない状態の時には、家庭裁判所に財産の分割を請求できます。家庭裁判所が調停(それぞれの言い分を聞いた上で裁判官が判断する)を行いますが、それでもまとまらない時には、審判手続きをして強制的に財産分割を定めます。
〇相続人に胎児が居た場合
胎児は相続においては「生まれたもの」とみなされるので、相続をする権利が発生します。胎児の状態では、当然ながら遺産分割協議は出来ないですし、法定代理人もいません。
そのため、胎児が生まれるのを待って遺産分割協議する必要があります。胎児が生まれた後には、協議をするために胎児の代理人を選定します。ただ、母親も相続人であれば生まれた子と相続において利益が相反することになるので子を代理することができません。そのため、家庭裁判所に対して特別代理人選定の申し立てを行う必要があります。
■遺産分割協議が完了したら
相続人同士で話し合い、相続財産の分割内容について全員が合意したとします。その時には「遺産分割協議書」を作成します。これは、いままで話し合った内容を全てまとめた書類になります。
遺産分割協議書は、後日不動産の相続登記(名義変更)などをする際に必要な、非常に重要な書類になります。また、どうしても実際に顔を合わせて話し合うのが難しい場合には、相続人の1人が相続財産の分割案を作成して、相続人全員がその「分割案」に署名・捺印をすれば「遺産分割協議証明書」とする事もあります。
■気をつけること
このように遺産分割協議は、相続において非常に大事です。この協議がまとまらなければ裁判にまで発展します。また、相続人が胎児だったり、協議がまとまらなかったりと、予想外の事に対しては処理する方法が決まっています。基本的には、弁護士や司法書士などの専門家を間にいれて協議する事も多いですが、自分自身でも、ある程度全体的な流れは把握しておきましょう。
7.遺産の分割方法
不動産を相続した時には様々な分割方法があります。特に相続人が複数人いる場合には後々トラブルにならないよう、全員が合意する分割方法を選択しましょう。不動産を相続時に分割する方法は以下のように4種類あります。
■現物分割
土地を相続した時の分割方法です。一つの土地を複数に区分けする事を「分筆」と言います。例えば、1,000㎡の土地が相続財産としてあり、相続人が2人いたとします。その場合には1,000㎡の土地を500㎡ずつに分けて、それぞれの土地を相続人が相続するのが現物分割です。
土地は広さだけでなく、形状や接している道路の幅員などによって、建てられる建物の大きさが決まってきます。そのため、土地を分筆する時には分筆後の土地に、どの程度建物が建てられるかを確認してから現物分割する必要があります。
■代償分割
代償分割とは、一方は不動産を相続して、もう一方はその不動産と同程度の価値を持つ(相続割合が同じ場合)財産を相続する事です。例えば相続人がA,Bと2人いたとします。Aはマンションを相続して、そのマンションの査定価格(現在価値)が2,000万円だったとします。
その時に、もう一人の相続人であるBがそのマンションと同じ価値である2,000万円分の債権(現金でも何でも良い)を相続する事(A,Bの相続割合が同じ場合)を代償分割と言います。Aの不動産価値は、固定資産税評価額が公示地価などの色々な不動産価値指標を参考にして算出されます。
■共有分割
相続割合に応じて不動産を相続人同士で共有する事です。例えば、相続財産として1室のマンションがあり、A,Bと2人の相続人がいて、相続割合は1:1だったとします。その時に、そのマンションの持ち分をA,Bが1/2ずつ所有することを共有分割と言います。共有分割のデメリットは、その不動産を処分する時に名義人全員の同意が必要になるという点です。
■換価分割
換価分割とは、不動産を売却して現金化した後に相続する方法です。現金化するので価値が分かり易く、後々トラブルが起こるリスクも小さいです。ただし、不動産を売却する時に相続人同士で意見が対立する場合があります。
例えば、一方は2,500万円で売却したいと思っていますが、もう一方は3,000万円で売却したいと思っている時などです。売却する時も相続人全員が同意しなければいけないので、上手く調整する必要があります。
■気をつけること
このように不動産の分割方法は大きく分けて4つの方法があります。それぞれ特徴がありますが、一番分かりやすく、簡潔に済む方法は「換価分割」です。換価分割以外は、不動産を所有し続けるので、どうしても処分する時や不動産市況によって後々のトラブルリスクが潜んでいるのです。
8.死亡保険金の受け取り方
身内の方が亡くなってしまい、亡くなった方が生命保険に加入している時には、死亡保険金を受け取る事ができます。ただ、生命保険会社は死亡した事を自ら知る事はしませんので、保険金を受け取る人が生命保険の請求をする必要があります。
■生命保険の基礎知識
一般的には生命保険と聞くと、〇〇生命保険会社の「生命保険」を想像すると思います。しかし、実はその他にも、郵便局の「簡易保険(かんぽ)」や、勤務先での「生命保険」、会社経営者や役員の場合には「経営者保険」などもあります。
特に、本人ですら知らない間に、勤務先などで生命保険に加入している場合もあります。そのため、身内が亡くなった時には勤務先にも必ず確認するようにしましょう。
また、いずれの生命保険も、請求人が請求しないと生命保険金はもらえません。一般的には生命保険金を請求する時は以下の書類が必要です。
・死亡保険請求書
・生命保険証書
・保険会社所定の死亡診断書
・被保険者(亡くなった人)の除籍謄本か住民除票
・保険を請求する人の印鑑証明と契約時の印鑑、戸籍謄本、身分証明
これらの書類を用意して保険会社などに提出します。
■生命保険金を受け取る手続き
前項の書類を用意したら、生命保険を受け取る人は手続きをしなければいけません。保険金を受け取る事が出来るかは、保険や保険に付保している特約の種類によります。そのため、生命保険金を受け取る手続きは、保険会社の担当者に早めに連絡を取るようにしましょう。具体的な手続きは以下のような流れです。
①保険金受取人が保険会社へ通知する
②生命保険会社などから必要書類等が送られてくる
③保険金受取人が必要書類等を提出し、請求手続きを行う
④生命保険会社が支払いの可否を審査審査結果が「支払い可」であれば、保険金を受け取る
上記③の時点で書類に誤りがなければ、保険会社の審査は1週間程度で終了します。
■生命保険金が受け取れない場合
生命保険の被保険者が死亡しても、生命保険金が受け取れない時があります。条件は各社によってマチマチですが、代表的な理由は以下の通りです。
・保険会社が定めた期間内の自殺である場合
・契約者や死亡保険金受取人が故意に被保険者を死亡させた場合
・戦争などが原因での死亡
また、死亡保険金は2年以内(保険会社によっては3年以内)に手続きをしないと、保険金を受け取る権利がなくなることもあります。
自動的に3年経過したから、権利が消滅時効によって消えるわけではありません。保険金の支払いを免れて利益を得るのが保険会社、保険金を受け取ることができずに利益を失うのが契約者(保険金受取人)になります。保険会社が契約者(保険金受取人)に意思表示すれば、時効が成立します。しかし、保険会社は死亡や満期時の保険金の請求に関しては、時効の援用についてはある程度幅を持たせている場合があるので3年経過しても諦めずに請求してみることが大事です。
保険金の請求を忘れていて3年以上経過していても、時効の援用がなければ保険金等の受け取る権利は消滅していないことになります。3年を経過した後で保険証券が出てきた。などの場合、諦めずに契約している保険会社に相談してみてはいかかでしょう。
■最後に
このように、死亡保険金を受け取るためには、保険金を受け取る人が請求をしなければいけません。身内が死亡すると、その他の相続手続きが忙しいため、つい後回しになりがちなのが生命保険の受取り手続きです。2年という猶予期間はありますが、忘れないうちにその他の相続手続きと並行して、保険金の受け取り手続きも行う事をお勧めします。