カメラが大好きな息子
今年の春、最愛の長男を亡くしました。まだ27歳でした。
カメラが趣味の長男は、毎年春になると遠くへ足を伸ばし、写真を撮ることを楽しみにしていました。
写真を取れなかった長男のために、祭壇の飾りつけは明るい「春」をイメージしてもらい菜の花やチューリップを飾っていただきました。きっと長男も天国で喜んでくれているでしょう。
小さな頃からどこかのんびりとしていた長男。運動も苦手で、外で遊んでも他の友達に馴染めずにいじめられて帰ってくることもたまにありました。それでも、決してやり返したりしない優しい子でした。
絵を書く事が大好きだった彼は美術の時間に書いた作品がコンクールに入賞したことも。大学生の時は描いた漫画が新聞に載って、家族みんなで大騒ぎしたこともありました。
あまり喋らない無口な子でしたが、自分の大好きな本や絵の話になると目を輝かせて語る情熱的な一面の持ち主でした。
大学生になって入った写真愛好会で、写真の面白さに目覚めると、一生懸命働いたバイト代で念願のカメラを購入。様々なところへ足を運び、写真を撮るになりました。人や電車が大好きで、気に入るショットが撮れるまで何時間も夢中になってカメラに没頭することも。
祭壇に、息子が生前愛用していたカメラを飾って欲しいという旨をエンディングプランナーの方に頼むと、「息子さんが撮られた写真を飾るのはいかかでしょうか」という提案をしていただきました。
実際に式場に飾る写真を選ぶ作業はつらく悲しい気持ちにもなりましたが、息子の死と向き合い、気持ちを整理する時間になったと思います。また、いつの間にか息子が隠し撮りしていた家族の写真を見て、妹たちと「お兄ちゃん、勝手にこんなの撮って。」「この写真、良い写真だね。」と口々に言い合い悲しみに暮れながらも愛しい思い出に笑顔がこぼれる瞬間がありました。
そして当日。別室に息子の撮った桜やチューリップ、水仙などの写真と、所々に家族の写真を飾っていただき、まるで春の柔らかな光の中で息子を見送れるような雰囲気を作ることができました。
息子の写真を見ていると、いつとっていたのだろうと首をかしげてしまうほど幸せそうな家族の笑顔がそこには写っており、寡黙だった彼のシャッター越しに家族を見つめる暖かな眼差しが痛いほど感じられ、思わず涙がこぼれました。
どの方からも、「家族への愛情が溢れた写真だね。」「優しい心が伝わって来るよ。」という言葉を頂けました。突然の別れに寂しさがこみ上げますが、安らぎの地でも楽しくゆっくりと過ごしてほしいと願って止みません。
ありがとう。またいつかお母さんの写真撮ってね。
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